反復・沈黙・問いかけ.第15回中河内緩和ケアカンファレンス

2018年12月20日に八尾徳洲会病院で行われた,第15回中河内緩和ケアカンファレンス.

 

今回は「聴くチカラ」というタイトルで,タイコー堂薬局の薬剤師である井上龍介先生が講演されました.

 

援助的コミュニケーション,その時あなたはどう答えますか?

 

医療に関わっている皆さんなら,患者さんや家族から,

  • 「不安で眠れないんです」
  • 「こんなに辛いのなら,いっそのこと死んでしまいたい」
  • 「家族が苦しむ姿を見ても,何をしてあげたらいいのか分からないから,ツライんです」

こんな言葉を聞いたことが,少なからずあるはずです.

 

言っている方も辛いけど,言われた我々もツラーくなりますよね.

そんな時,皆さんはどう答えますか?どう対応しますか?

 

援助的コミュニケーション

上記のような発言があった時,我々医療者,特に医師は全力で解決策を考えます.

 

  • 眠れない→睡眠導入剤 ん?待てよ,不安で眠れないというならば抗不安薬を処方しよう.
  • 何をしてあげたらいいのか分からない?→痛い時にはこの薬を渡して,眠れない時にはあの薬を渡して,それでも眠れないなら2時間後にもう1回あの薬を渡して・・・,と家族に指導した.

 

このような指示型アプローチをとることが多いのでは?
情報を収集し,必要な情報を伝達し,問題を解決することが求められているのですから,当然です.

 

しかし,上記のような発言の真意は,具体的な解決策を求めての発言でしょうか?

 

思い出してみてください.

皆さんが,仕事やプライベートであった辛いことを友達や家族に話す時を.

そのとき,解決策や対応策を求めていますか?

 

「昨日仕事で〇〇のようなことがあってさー,辛かったんだよね」って打ち明けた時に,

「それは△△して,××したらよかったんだよ」と即答されたら・・・.

 

たしかに,解決策を求めて相談する場合もありますが,実は,話を聞いてほしい,共感して欲しい,受容して欲しい.これらの感情を自分で意識していないかもしれないけれど,心の奥底ではそう思っている.

 

だから,解決策を提案されても,話を聞いてもらった,共感してもらえたと感じられない.

その結果,

「私の話,ちゃんと聞いてる!?」

男女の会話の「あるある」ですね.

 

では,どうしたら良いか?

 

非指示型アプローチ(援助的コミュニケーション)を取ると良いようです.

相手が話すことを聴くことで,相手の満足・安心・信頼が得られ,苦しみを和らげることができる.

決して解決策を提示しなくても,苦しみが和らぐのです.

 

援助的コミュニケーションスキル

援助的コミュニケーションといわれても,何をどうしたらいいのか?

 

以下の3つのスキルを意識して使ってみると良いです.

  1. 反復:相手のメッセージを言語化して返す
  2. 沈黙:相手の心の準備ができるのを待つ
  3. 問いかけ:相手の支えを意識して尋ねる

 

1.反復

先ほどの例を用いるならば,

・「不安で眠れないんです」

→「不安で眠れないんですね」

・「こんなに辛いのなら,いっそのこと死んでしまいたい」

→「死んでしまいたいと思うくらい,辛いのですね」

・「家族が苦しむ姿を見ても,何をしてあげたらいいのか分からないから,ツライんです」

→「苦しんでいる家族を見ても何をしてあげたらいいのか分からないから,ツライのですね」

 

自分の言葉を反復してくれることで,わかってくれた(理解してくれた)と思える.

この人ならば安心して信頼できると思ってもらえる.

 

相手の言葉を反復するというスキルを身につければ,「死んでしまいたい」など,返答することが難しいことを言われても,なんとか対応できそうですね.

 

ただし,反復に向かない内容もあるようです.

  • 感情の先取り
  • ほめられたとき
  • 認知症の方の被害妄想
  • 急ぐとき など

特に感情の先取りは,ついついやってしまいそうなので注意が必要です.

例)「昨夜眠れなかった」→「眠れなくて辛かったのですね」

眠れなかったのは事実だが,辛いとは感じていないかもしれない.

 

2.沈黙

negativeな内容の会話では「間」が気になります.

何も話さない時間が続くと,気まずーい雰囲気となるので,何か話さなければ,何か言葉を発しなければ・・・.

 

緩和ケア研修会では,コミュニケーション(バッドニュースを伝える)のモジュールがあります.

患者,医師,観察者の役割が与えられ,「治らないガンであることを告知する」という,非常にストレスフルなロールプレイを行います.

 

ロールプレイの振り返りを行い,受講生の皆さんが感じたことや意見などを全員でシェアするのですが,必ず「間」「沈黙」の使い方が話題になります.

 

医師役をやってみて,「沈黙」の時間ができると

  • 何か話さなければ・・・.
  • 解決策を出さなければ,不安を与えてしまう・・・.
  • 励まさなければ・・・.

 

しかし,患者役をやってみると,辛いことを言われた後「沈默」がないと

  • 考える・頭を整理する時間が欲しい
  • 頭が真っ白になってしまうので,何を言われたか覚えていない
  • 次々に言葉を浴びせられると,こちらの気持ちを言いだせない

 

患者にとって「沈黙」の時間が流れることは,決して悪いことではない.むしろ,事実を受け入れ,頭を整理し,自分の考えをまとめるために必要な時間であると言えます.

 

もし,沈黙の時間が長く続き,言葉かけに困ったら,

「今何を考えていましたか?」

と話しかけてみてはどうでしょうか.

 

3.問いかけ

60分という限られた講演時間だったので,「問いかけ」に関するお話は聞けませんでした.

 

ただし,反復と沈黙を繰り返して会話を継続して行くと,ドンドン重〜い雰囲気となるので,「問いかけ」をすることで軽くして行くことができるようです.

 

感想

緩和ケア研修会でもコミュニケーションのモジュールがあり,何度も聞いている内容ですが,何度聞いてもハッと気づくことがありますね.

 

緩和ケア研修会では精神科医が担当しますが,今回の講演では薬剤師の先生だったので,いつもと違った視線から話が聞け新鮮でした.

 

コミュニケーションにもスキルが要求されます.逆にいえば,コミュニケーションスキルを用いることで,より良い関係を築くことができます.

 

反復と沈默

 

意識して使ってみることで,是非とも自分のものにしたいと思います.