【注意】「湯たんぽ」による低温やけど

寒い日が続きますが,みなさん体調はいかがでしょうか?

 

寒い冬の日には,コタツに入って温もりたいところですが,一度入ると抜け出せない,ぬくぬくして眠くなる,風呂も入らず寝てしまう,寝たら最後朝までぐっすり,となるので,コタツのことを個人的に「廃人製造機」と呼んでいます.
コタツに入れば,もれなく「廃人」となり,やらなければならないことが一切できなくなるため,我が家にはコタツがありません.替わりにホットカーペットを敷いて,ブランケットを掛けています.

 

結局,おなじか?

 

寒い日は布団に入るのも一苦労しますね.

若かりし頃は,冷たい布団の中に入ってキューっとこごえたあと,徐々に暖かくなってくる感覚が好きでしたが,歳をとって変態度も老化し薄くなってきた現在では,前もって布団を温めておいて,ヌクヌクの布団に入ることの方が断然気持ちよくなってきました.

 

布団を温めておくのに,みなさんは何を使いますか?

 

私は電気毛布を使っているのですが,中には「湯たんぽ」を使っている!という方も?

 

実はこの湯たんぽ,布団を温めるだけに使っているならば気持ちのいいものなのですが,使い方を誤ると大変なことが起きるので,注意が必要です.

 

湯たんぽ

在宅訪問診療で高齢の患者さんのお宅を訪問することが多いためか,最近湯たんぽを使っている方を結構見聞きします.

 

電気式の毛布や案下(あんか)と違い,空気が乾燥しない,なんとなくエコ&クリーンな気がする,温かい(そら沸騰したお湯を入れておけば温いわな)などの理由から,湯たんぽを愛用されているようです.

数年前にテレビか雑誌かで湯たんぽ礼賛の特集があり,ブリキの湯たんぽではなく,オサレでカワイイ湯たんぽも登場しているようです.

 

しかし,この湯たんぽ,使い方を誤ると大変なことになります

 

湯たんぽによる低温熱傷

「低温やけど」とも呼ばれる低温熱傷.

私が関係している患者さんの中で,この冬すでに三名,湯たんぽが原因で低温熱傷になっています.

 

低温熱傷はタチが悪いです.

 

外科医ならソフト凝固をイメージすればわかりやすいでしょう.

シェフやシュフなら肉のローストでしょうか?

 

高い温度ではないため,熱による痛み刺激を感じにくく,そのため長時間に渡って熱源と接触し続け,ジワジワと深く広く熱が伝わっていきます.

 

皮膚の表面だけが赤くなりとても痛い,I度熱傷.

水ぶくれができる,II度熱傷.

皮膚の厚さ全てが障害を受ける,III度熱傷.

 

低温でジワジワやられるため,気がつけば一番深いIII度熱傷になっていることも稀ではありません.

 

国民生活センターの調査によると,低温やけどは、心地よいと感じる温度(40度~50度程度)のものに長時間皮膚が接することで起こります(50度なら3分間の圧迫、42度でも6時間接触すれば細胞が変化するという報告があります).

http://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen241.html

 

消費者庁がリリースした報告書には低温やけどの写真も載せられています.

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/151118kouhyou_1.pdf

 

私の患者さんは三人とも,足先が冷えるからという理由で,湯たんぽを足の上に置いたまま眠り,気がついたら低温熱傷となっていました.特に足先は皮下脂肪が薄かったり,外反母趾のため骨が突出していたりするので,低温やけどの結果,骨が露出してしまった方もいました.III度熱傷です.

 

タオルを巻いているから大丈夫? 沸騰する前のお湯だから大丈夫?

本当に大丈夫ですか?

 

湯たんぽだけではない

たまたま3例続いたため,湯たんぽを槍玉に挙げましたが,先ほどの消費者庁の報告にもあるように,湯たんぽだけが低温熱傷の原因ではありません.

 

背中に貼り付けたホッカイロを外さず寝てしまって,背中に四角形の熱傷,
ファンヒーターの前で寝てしまって,吹き出し口のフィンの型になった下腿の熱傷,
サウナの熱源の前で寝てしまって,重症の脱水症と背中の熱傷,

ふと思い出すだけでも,これだけの患者さんを診ました.

 

ヌクヌクして気持ち良いのは十分理解できますが,ちょっと気をつけておかないと,後々大変なことになりますので,十分に注意してください.

 

特に,脳梗塞や神経難病などで足の動きや感覚が鈍くなっている方,糖尿病や悪性腫瘍,薬の副作用によって神経が侵されている方,栄養状態が悪く痩せてしまった方など.
足先が冷えやすいのわかりますが,温め機の使い方を誤ると,ひどい低温熱傷となり,さらに全身状態が悪化してしまうという悪循環に陥る危険性があります.

ご本人が気をつけることはもちろん,介護されている方も十分に気をつけてください.相手を想って,良かれと思ってやった行為が,負の結果になるかもしれません.

 

まとめ

寒い冬の日,ホッカイロや湯たんぽ,電気毛布にコタツ.温まるために色んな器具を使いますが,低温熱傷とならないよう,十分な注意と配慮をお願いします.