他人を否定しても負の感情しか生まれない
教育は難しいですよね.
子供の教育,後輩の教育,コメディカルの教育 etc.たびたび話題にしているPEACE研修会では,価値観も動機も違う人間が集まる訳ですから,なおさら難しい.
研修会で講師が一方的に話をしても教育効果はあがらないので,質問をしてみたり,挙手をしてもらったり,意見を聞いたりと,いわゆる双方向性講義を行っています.PEACE研修会に参加された方は感じたかもしれませんが,
「すぐ当てられる」
まさにアレです.
その中で我々が大事にしていることは,意見を聞くときの姿勢と,聞いた意見への対応です.
受講者は座って講義をうけているし,講師は立って講義をしている.その位置関係を保ったままにすると,受講生は上から見下ろされながら意見を言うことになります.気持ちのいいものではありませんし,プレッシャーを感じてしまい上手く考えをまとめられなくなるかもしれません.ですので,極力しゃがんで目線を受講者よりも低くして意見を披露してもらうようにしています.
視線を合わすかどうかは難しいところで,ガン見されたら恥ずかしさやプレッシャーを感じてしまうでしょうし,全く目を合わさなかったら「せっかく頑張ったのに聞いてもらえなかった」となってしまいます.時々視線を合わせ,相づちをうちながら聴くようにしています.
また聞いた意見への対応も大事です.わざわざ意見を披露してもらう1番の目的は,会場にいる皆さんと意見を共有することにあります.自分一人や自分のグループでは考え及ばなかったこと,違った考え方などを共有することで学習効果があがります.ですので,講師は出された意見をもう一度くりかえし披露しています.
余談ですが,出された意見を他の受講生にもわかりやすい言葉に言い換えて繰り返すのは,3個が限度です.それ以上だと覚えきれず,繰り返すことができません.裏を返せば,教育の現場で,一度に4個以上の内容を言われても絶対に覚えられないし,下手したらパニックになって1つも頭に残らないということが起こりえるということです.教育熱心で伝えたいことがたくさんあるのは理解しますが,一度に伝える内容は1〜2個に留めておくべきだな〜と思っています.
また時々,期待していた答えとは違った意見がでることがあります.こちらが思いつかなかった正しい解答ならば素直に「なるほど」と感想を添えられるのですが,事実と間違った返答があったときが困ります.みんなで意見を共有するので,間違いは正さなければならないし....,頭の中フル回転で対応を考えます.
まず何より大切にしているのは「絶対に否定しない」ということです.
勇気を出して披露した意見を否定されると,否定されたという負の感情しか残りません.しかも大勢の前で否定をされると,公開処刑にあっているようなものです.本来,どこが間違っていたのか冷静に考えるが大事なことなのに,一言でその機会を奪ってしまいます.
事の正誤を指摘するよりも,その考え方にいたったプロセスを聞き出すことが,教育者や指導者に求められるスキルだと思います.
と,エラそうなことを言ってますが,日常生活でも,ついついやってしまいます.
子供が何か突拍子もないことをやったときに「なにしてるんや!」「なんでそんなことするんや!」.
自分の思った段取りと違うことをされた時に「そんなことせんでもいい!」「時間の無駄だ!」.
皆さんも,やっちゃってませんか?
語尾に「!」付けてませんか?
子供は子供なりにひらめいて行動しているわけですし,その人なりによかれと思ってやったことかもしれません.この否定が,誰が聞いても論理的に正しいならば,否定された人は納得するかもしれませんが,論理的に正しくなく感情的に言われたとなると・・・.
もうやめとこ,もう言わんとこ,となり,結果として双方の利益が削がれる結果となるんじゃないかと思います.
特に自分を戒めたいのは,年齢が上がったり,役職が上位になったり,開業して経営者になったりしたら,意見を聞かれる立場よりも意見を聞く立場になることの方が多くなると思います.それなりに経験を積み,社会的に成功していくと,自分が正しく,自分の意見ややり方と違うことは間違いであるという「沼」に落ちる可能性があります.
いろいろ思うことはあるとは思いますが,絶対に意見を否定せずに聞くようにしたいと思います.その姿勢が結局自分に返ってくるわけですから.
教育に関して「こころ」に刺さる言葉がありますので,紹介します
批判ばかりされた 子どもは 非難することを おぼえる殴られて大きくなった 子どもは 力に頼ることを おぼえる笑いものにされた 子どもは ものを言わずにいることを おぼえる皮肉にさらされた 子どもは 鈍い良心の もちぬしとなるしかし、激励をうけた 子どもは 自信を おぼえる寛容にであった 子どもは 忍耐を おぼえる賞賛を受けた 子どもは 評価することを おぼえるフェアプレーを経験した 子どもは 公正を おぼえる友情を知る 子どもは 親切を おぼえる安心を経験した 子どもは 信頼を おぼえる可愛がられ 抱きしめられた 子どもは 世界中の愛情を 感じとることを おぼえる川上邦夫訳「あなた自身の社会ースウェーデンの中学校教科書」
「子ども」を「部下」「後輩」「従業員」に置き換えても当てはまりますね.
「他人を否定しない」
忘れていたら,誰か指摘してください.