XYZ　「風しん排除には君たちの行動が必要なのさ」

風疹が問題になっています．

風疹なんて子供の病気！　と思っているあなた，考えを改めましょう．

国立感染症研究所が出している「風疹急増に関する緊急情報　2019年4月24日現在」によると，報告患者の94％（1,254人）が成人で、男性が女性の3.8倍多く，男性患者の年齢中央値は40歳（0～75歳）で，特に30～40代の男性に多く（男性全体の61％），女性患者の年齢中央値は30歳（0～69歳）で，特に妊娠出産年齢である20～30代に多い（女性全体の65％）．と報告されています．

つまり風疹は子供の病気ではなく，大人の病気なのです．

先天性風疹症候群

風疹の症状は，感染から14〜21日（平均16〜18 日）の潜伏期間の後，発熱，発疹，リンパ節腫脹（ことに耳介後部、後頭部、頚部）が出現するが，発熱は風疹患者の約半数にみられる程度であり，また不顕性感染が15（～30）％程度存在するといわれています．

記憶を，医師国家試験の勉強をしていた20年ほど前まで溯ってみると，全身性の発疹，リンパ節腫脹，発熱が風疹の三主徴でした．しかし，せっかく覚えたこの3つの症状が揃うことは珍しく，また，不顕性感染もあるため，臨床症状だけで診断を下すのは難しいようです．

風疹に対する特効薬はなく，発熱などに対して解熱剤を投与するなどの対症療法を行うのみですが，風疹自体の予後は良好です．

では何が問題なのか？

先天性風疹症候群です．

妊娠20週頃までの妊婦が感染したことにより，風疹ウイルス感染が胎児におよび，先天異常を含む様々な症状を呈する先天性風疹症候群（congenital rubella syndrome：CRS）が出現することにあります．先天異常として、先天性心疾患（動脈管開存症が多い）、難聴、白内障、色素性網膜症などが挙げられます．先天異常以外にも，低出生体重，血小板減少性紫斑病，溶血性貧血，黄疸，間質性肺炎，髄膜脳炎などが起こる可能性があります．

妊婦が感染したことによって胎児に重大な影響が及ぶ危険性があるのです．

なんと，女性患者全体の65％が，妊娠出産年齢である20～30代です．

風疹ワクチン接種

風疹と言えばワクチン．弱毒生ワクチンです．

2回打つことで，95％の人が免疫を獲得できます．

風疹ワクチンに対する制度は時代と共に変遷し，平成2年4月2日以降に生まれた人は2回，公費でワクチンを受ける機会がありました．しかし，昭和37年度から平成元年度に生まれた女性及び昭和54年度から平成元年度に生まれた男性は受けていても1回です．そして、昭和54年4月1日以前に生まれた男性は1回もその機会がなく、十分な免疫を獲得していないとされています．

ですので，近年の風疹患者は女性より男性の患者が方が多く，男性患者の61％が30～40代の男性となっています．

ちょうど私も昭和49年生まれであり，風疹の予防接種を行ったのか否か？　記憶はありませんし，自分の母子手帳もすでに・・・．

風しんに関する特定感染症予防指針

一時は減っていた風疹の発生ですが，海外で感染を受けて帰国後に発症する成人男性や職場での集団発生が散発的に起こっています．

先天性風診症候群の患者は，平成24年10月～平成26年10月に45人，平成26年から平成29年にかけては，各々年間319例，163例，129例，93例の報告があり，平成23年以前の水準に落ち着いていたものの，平成30年には7月下旬頃から関東地方を中心に患者数の報告が増加している状況です．

このため厚生労働省は，2020年度までに風しん排除の達成を目指し，風しんに関する特定感染症予防指針を改正（平成29年12月21日一部改正、平成30年1月1日適用）しました．具体的には，風疹及び先天性風疹症候群の発生時に迅速な対応ができるよう、風疹の患者が一例でも発生した場合に，感染経路の把握等の調査を迅速に実施するように努めるとともに，原則として全例にウイルス遺伝子検査を実施することで，確実に風しんを診断することとしています．また改めて定期予防接種に対する積極的な接種勧奨を行うとともに，妊娠可能女性とその家族への予防接種の推奨，また産褥女性に対する風しん啓発を行っております．